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2026.06.25 Thu

アドバイザリーボードによる総評|令和8年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業

>>総評のPDFデータはこちらをご覧ください。

アドバイザリーボードによる総評

 沖縄県文化芸術振興会の沖縄アーツカウンシルでは、「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」として、沖縄の多様で豊かな文化芸術活動の持続的発展を図る取り組みを行なっています。前身事業から数えると、沖縄アーツカウンシルによる支援事業は今年で15年目を数え、本事業も5年目を迎えました。

 今年度の選考結果と過去3年の採択状況は下表のとおりです。今年度は交付予算の増額を受けて、総採択件数が増え、全体の採択率も5割を超えました。県による予算の増額措置は、今後の方向性を示唆するものとして重要な意義が認められる一方、ニーズに対する予算不足は依然として継続しています。

▼「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」の採択状況

団体
(採択率)
スタートアップ
(採択率)
個人
(採択率)
総採択件数
(採択率)
補助金
希望総額
県予算額
(希望総額との差引額)
2024年度 41件中13件
(32%)
13件中4件
(31%)
12件中6件
(50%)
66件中23件
(35%)
1億7009万円 4593万円
(-1億2416万円)
2025年度 31件中13件
(42%)
8件中6件
(75%)
7件中3件
(43%)
46件中22件
(48%)
1億84万円 4010万円
(-6074万円)
2026年度 35件中17件
(49%)
8件中4件
(50%)
9件中7件
(78%)
52件中28件
(54%)
1億3237万円 6002万円
(-7235万)


 選考については、申請後の辞退1及び資格審査否1件の計2件を除く50件について、3日間をかけてプレゼンテーション審査会を実施し、4日目にアドバイザリーボードが公募要領にある基準に沿って採点を行ない、点数が上位の事業から予算額の枠内で採択しました。採択に際しては、ボードメンバー全員で議論を尽くしました。今年度も煩雑な書類をご準備いただき、プレゼンテーションにご参加下さった皆様に感謝いたします。


  採択された28件には、石垣島、西表島、宮古島、大宜味村、名護市、読谷村、沖縄市、宜野湾市、那覇市、南城市、糸満市等、県内各地の活動に加え、川崎市、台湾、ベトナム、スイス、ドイツ、ブラジルなど、県外や海外の交流・発信事業も見られます。内容面では、危機的な伝統の継承と革新、映像や音声による地域の民具・歴史・人・歌の記録と伝承、移民県ならではの事業、障がい及び様々な困難のある方々の鑑賞と創造発信、県民参加の芸能大会やワークショップ、平和のための取組み、観光や教育との連携など、文化芸術の多面的な役割や課題が見えるものでした。採択事業から3つを紹介します。

[応募区分]団体
[事業区分]区分1:文化芸術団体等の組織力向上・基盤強化に資する取り組み
[事業者名]沖縄クーチョー継承実行委員会
[事業名]音色と楽器を次世代に引き継ぐための沖縄クーチョー(胡弓)発信事業
琉球古典音楽・琉球舞踊・組踊に不可欠な沖縄クーチョー(胡弓)の演奏者不足と楽器製造者不足の危機に対して、まずはクーチョー普及の素材開発・情報発信・ワークショップ開催に取り組む事業です。

[応募区分]スタートアップ
[事業区分]区分3:文化芸術を通じて地域の諸課題解決や活性化の促進等に寄与する取り組み
[事業者名]惠宏(けいこう)会
[事業名]〜色彩と音律が織りなす×共生社会の先へ〜
重度・知的障がいのある方々のアール・ブリュット作品を当事者団体がプロデュースし、障がいを「支援対象」としてではなく、共に文化を創造する「アーティスト」として捉え直し、発信する事業です。

[応募区分]個人
[事業区分]区分3:文化芸術を通じて地域の諸課題解決や活性化の促進等に寄与する取り組み
[事業者名]book bam boo 代表 本竹功治
[事業名]津波古の文化芸術発信『小さな文化ラジオ』あなた、”何班”ですか
南城市津波古区の「みんなで自治を楽しむ“小さな文化”」をポッドキャストのラジオ番組として収録し、住民の記憶や声をウェブサイトに残して、地域や人とのつながりを楽しむヒントを発信する事業です。


 以下に、今年度の審査会を終えたアドバイザリーボードの所見をお伝えいたします。

1)生成AIによる申請書やプレゼン資料の作成は、事務負担軽減の一助となる一方、言葉が上滑りしている印象を受けることがありました。何のための文化芸術なのか、なぜその土地で実施しなければならないのか、具体的に誰に何を届け、どのような状況を変えたいのか。「コンテンツ」「自走化」「観光資源」等の一見それらしい言葉に流されず、それぞれの土地や申請者の内側から出てくる生きた言葉で、文化芸術の可能性を大きく深く考え、伝えていただければ幸いです。

2)団体・スタートアップ・個人を問わず、活動内容と補助の制約の間の「対話」が事業をよりよくすることも多いため、申請前にはなるべく説明会や相談会をご利用ください。また、補助予算には限りがあるため、必要な内容と予算を明確にして、できるだけ具体的にご申請ください。

3)申請事業には、本来であれば公的機関が取り組むべきであるような喫緊の課題について、危機感を持つ若手・中堅有志が取り組んでいるものが見受けられました。公共的な効果が大きく、支援の緊急性が高いと考えられるそうした事業は、通常の自社事業の延長と思われるものや、補助金なしでも実施可能に見受けられる活動と比較して、高く評価される傾向にありました。

4)過去に採択された事業の23年目の申請において、内容の積み重ねや展望が十分でないように感じられるものが複数ありました。単なる事業の継続や拡大ではなく、当初の問題意識に立ち返り、本来の課題に対する展望・突破口が開けてくるような取組みの充実を願っております。


 今年度は、県からの補助金総額、事業者の申請件数、採択件数の全てが増加しました。これは県内の文化芸術活動の盛り上がりを示すとともに、沖縄アーツカウンシルのプログラムオフィサーの日々の業務や、オープンな事業報告会、北部や離島でも開催されている補助金説明会が成果を生んだものと考えます。沖縄アーツカウンシルの専門家たちの日頃の努力にあらためて敬意を表したいと思います。

 「戦後」80年を過ぎて、戦争の歴史と平和のあり方が曲がり角に差し掛かるような現在、どのような方向へと歩みを進めていくのかに関して、個々の文化芸術事業は決して無力ではありません。地域や人と新たにつながるためのアイデア、危機に瀕した楽器や民具を失うまいとする意志、土地の歴史を振り返りながら外へ延びはじめる線、多様な当事者が自ら作る新しい場。こうした取組みの一つひとつが、現代の不安に屈することなく、楽しく、優しく、未来の社会の土台を作っていくことを信じています。

 沖縄県文化芸術振興会は、県文化行政を補完する目的で県によって設立された公益財団法人であり、今年度からは沖縄県立博物館・美術館の指定管理を担います。今後は、全国的に先駆的な沖縄アーツカウンシル事業を、より有機的に県文化行政や県立施設と連携させ、横のつながりや面的な環境整備の強化が求められます。そのためには、短期の雇用ではなく、振興会にも正規雇用され持続的な発展を担う専門人材が必要でしょう。行政と専門家のさらなる対話と連携を県及び文化芸術振興会に期待します。

沖縄アーツカウンシル アドバイザリーボード
大田静男、金惠信、新城郁夫、林立騎、若林朋子



総評一覧|沖縄文化芸術の創造発信支援事業

令和8年度
令和7年度
令和6年度
令和5年度
令和4年度(団体・スタートアップ)
令和4年度(個人事業主)
令和4年度(第2回公募)